掘り出し物
(花瓶と人形の家)
ひんやりしていて軽くって、今日はこの花瓶を風呂に入れてやろう。
オヤ、二人とも随分熱心だね。
旅の間、宿屋の傍の雛道具屋に頼んでおいたんだ。気に入ってくれた?
しかしね、この花瓶の方が良かないかしら?
おミツ、見てみて。小さな寝台、小さな枕、お座布団にお軸まで!
ハイカラだっちゃねえ。職人もまたよく作ったごた。
お人形がいないから、何時でも飾っていいのよねえ。
ご好評非常に嬉しいけれど、この花瓶も見ておくれよ・・・(掘り出し物だったのに!)
おしまい
値段はもちろん品質によってピンからキリまである。
東京にはこうした人形を商う店が百件以上もあり(中略)・・・値段だけでなく、スケールもまた大小さまざまである。
ほんの数十センチ四方の台の上にところ狭しとならんだ、まことにかわいらしいものがあるかと思えば
二メートルから三メートル四方の、台というよりはベランダに勢ぞろいした立派な人形たちが、それこそ部屋の半分以上も占領していることもある。
植物学者モーリッシュの大正ニッポン観察記/ハンス・モーリッシュ著/瀬野文教訳/草思社/2003
2005.5.5