此世の春
(あさましき晴天)










今は世に在らせられずとは存じつつも、尚おはす様に思はれ候を
あなた様には一入御感の御深きことと存じ上げ候。
・・彼是と思ひ出づれば、御生前のこと何かと偲ばれて悲しくも又悼はしく候。



誦経の鐘の音がする
今時分 蓮の台か極楽浄土か はたまた何処に転生なされたか



ただ二度と 二度と 姿が見えぬとは
背中を支えるその温かさ きつく握った指の痛みに
こぼるる涙のあたたかさ。




おしまい

『実用手紙と端書文』/湯浅粂策/春江堂/昭和十一年発行より
三回忌記念(?)




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